中南米の古代建造物に巧みな音響効果


 2010年12月18日

 中南米の古代建造物に巧みな音響効果

中南米古代文明では、スピーカーが発明されるはるか以前から建造物が音の増幅効果や特殊な音響効果を持っていたらしい。複数の考古学者チームが調査結果を発表した。  

 メキシコ国立自治大学の考古学者フランシスカ・サラケット(Francisca Zalaquett)氏が率いる調査チームによると、メキシコ南東部に位置する古代マヤ文明の都市パレンケの神殿は、全体が一種の拡声装置として機能し、そこから発する音はかなり広い範囲にまで届いていた可能性もあるという。  

 サラケット氏のチームは最近、パランケの北部遺跡群で紀元600年頃建造の公共広場や神殿に備わる優れた拡声効果を発見した。古代マヤ文明では神々を讃える祭礼儀式のほか、王の即位、王族の子女誕生、戦争での勝利などを祝う場合にも、公の場で儀式を催す習慣があったという。その際、歌い手や祭司が神殿の屋上や拡声効果を持つ専用の部屋の中に立ち、広場に集う人々に向かって歌や祈祷文を聞かせていたと考えられる。また付近からは、ひょうたんの中に種子や小石を入れたマラカスのような楽器やオカリナなどの管楽器なども出土している。当時この神殿や広場では、人の声だけでなく楽器の音も周囲に響き渡っていたことだろう。  

 サラケット氏らの調査によると、建物の構造自体に音の増幅効果がある上、表面をしっくいで覆って音響効果を意図的に高めていた可能性があるという。現在もしっくいが残る建物で測定を行ったところ、音の吸収率や反射率の変化を伺わせる結果が得られた。「これらの建物が音響効果を十分考慮して建造されたものだと見ている」とサラケット氏は述べる。  

 調査チームは最新の測定機器や3Dコンピューターモデルを駆使して、実際に神殿の屋上から発した音がどの程度の範囲まで届くかを検証した。その結果、少なくとも100メートル以内ならクリアに聞き取ることができると結論付けている。  一方、別の調査チームによるとアメリカ大陸にはマヤ以外にも、建造物によってさまざまな音響効果を生み出していた古代文明があるという。  

 ペルーのアンデス山脈一帯でインカ文明よりもはるか以前に栄えたチャビン文化がその1つだ。アンデス山中に残る約3000年前の遺跡「チャビン・デ・ワンタル」の地下には、総延長およそ1キロの石造りの迷宮がある。多くの地下室や曲がりくねった通路が音を増幅させるだけでなく、人の心理を惑乱させるような音響効果を備えているという。  

 アメリカにあるスタンフォード大学の考古学者ジョン・リック氏は、「この迷宮内を歩きながら声を出すと、移動するにつれてその声が変化するように聞こえる」と説明する。

 リック氏らの調査によると、いくつかの部屋とそれらを結ぶ通路によって音が一瞬のうちに幾重にも反響するため、あらゆる方向から同時に鳴っているように聞こえるのだという。  

 複雑な間取りと同様、こうした音響効果には人を興奮させ、その平常心を失わせる働きがある。宗教上の目的から、迷宮には内部に立ち入った人間の心理を高揚させる意図があったのではないかと調査チームは推測する。  

 イギリス、ダラム大学の考古学者クリス・スカー氏は、古代文明の建造物が顕著な音響効果を有するのはある意味で当然だと語る。詰まるところ神殿や広場は、大規模な儀式が執り行われる舞台装置だったからだ。「この世のものとは思えない神秘的な音が辺りに満ちれば、儀式は荘厳で魅惑的な雰囲気に包まれるだろう」とスカー氏は説明する。  

 パレンケの神殿やチャビン・デ・ワンタルの地下迷宮が、音響効果を狙って設計されたのかどうかは今のところ定かではない。だがスカー氏はその点に関心を示さない。というのも、音響効果を作り出しそれを利用する術を古代人は知らなかったというのが同氏の主張だからだ。スカー氏は、「おそらく従来通りの方法で造り始めた建造物に偶然、音響効果が備わってしまったのだろう」と語る。  

 2つの研究結果は、メキシコのカンクンで開かれたアメリカ音響学会で発表された。  

 ナショナルジオグラフィック式日本語サイト


区切り

 古代の神殿と地下迷宮に音響効果があることがわかりました。意図して作られたものなのか、それとも単なる偶然か。意見は分かれているようですね。

 (開運編集部 F)    タイトル 神秘

 

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